Bruno Pelletier Japon

「親密な夜」ツアーと「Jukebox」コンサートのレポート

La tournée "Soirée Intime"
コンサート・ツアー「親密な夜」


2017年秋から、ブリュノ・ペルティエは「親密な夜 Soirée Intime」ツアーを行っています。最初は数回の予定が好評を博し、アルバムを出し、そしてツアーは2019年夏まで続くことに。

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2007年頃の「ブリュノ・ペルティエとでっかいオーケストラ Bruno Pelletier et le GrosZorchestre」の時の経緯ととてもよく似ています。これも最初は数回だけの特別企画だったものが数年続き、その人気ぶりを受けて出されたCDは音楽賞を受賞するに至りました。そして、この時ピアニストとして参加していたジュリー・ラモンターニュが、今回のツアーでも参加。ジュリー自身も音楽賞を受賞するほどの実力派。

この「親密な夜」(=打ちとけた夜)ツアーの舞台では、ブリュノの歌声とジュリーのピアノ演奏だけという、ブリュノの歌声をマックスに味わえる極上の仕上がり。ジュリーはブリュノを真剣に見つめながらピアノを弾いていて、ブリュノの歌にぴたっとピアノを合わせてきます。ブリュノの呼吸や歌い方を熟知し、ブリュノもとても歌いやすそう。時にジュリーの強弱をつけた心に迫るピアノの音色だけがしばし響いて、こちらもまた拍手を誘います。



元々ブリュノは同じツアーでも日によって曲構成を変えてくるほうですが、特にジュリーと一緒の「でっかいオーケストラ」や今回の「親密な夜」ツアーでは翌日でも別のツアー並みに違っています。今回はブリュノの曲以外にもいろんな分野の曲が選ばれていて、アルバムにも収録されているプッチーニのオペラ「トゥーランドット」など、感動もひとしお。

私が見た初日の劇場 Moulin du Portageでは、本当に力強さが際立っていて、何度も聞いた「アムステルダム」(ジャック・ブレル)はブリュノの動きもキレッキレ、「すごい」の一言。1曲目の「Incognito~You Raise Me Up」を聞いただけで、「この1曲のためだけに太平洋を横断する価値がある」とやっぱり思ってしまいました。CDだけでも素晴らしい歌声は伝わりますが、実際のコンサートではそれをはるかに超えてくる歌声。単に迫力があるという以上の凄みと深みが加わり、そして言葉の一つ一つが胸に突き刺さってきます。CDで何度も聞いたはずの曲なのに、新たなことに気づかされたり、感じさせられたり。ブリュノは2年に一度はCDを出し、テレビにもちょくちょく出演しますが、彼自身は舞台(コンサート)をとても大切にしています。そして、実際に見ているといつも思うのは、「ブリュノ・ペルティエは舞台の上にこそ存在している」ということ・・・。

ブリュノはTwitterのアカウントのプロフィール欄に「Porteur de mots et de notes...(言葉と音符の配達人)」という表現を使っていますが、そのシンプルな表現に表されているように、彼は単にうまいだけではなく、歌詞が表す「心」を奥深くから伝えてくれています。それは、おそらくフランス語がわからなくても感情を揺さぶられるレベル。

そして、今回はミュージカル「ノートルダム・ド・パリ」で彼自身のオーディション曲だったという、「リューン(月)」と「カテドラルの時代」を披露。「リューン」は特にサビの伸ばす部分が、透明な夜のしじまに溶けていくように響き渡って、思い出すだけで胸が熱くなります。
元々ブリュノは息は長いほうですが、今回のツアーでは特にブレスをものすごく長く伸ばしていることが多々あって、それも印象に残りました。そして低温もすごく響いていて、その豊かな歌声に加わる新たな魅力。



1夜めはかなりアルバムの曲を歌ってくれていましたが、2夜めのLa Chappelleではアルバム以外の曲も多々。そして何度もスタオベが沸き起こり、コンサートはものすごい盛り上がり。

名曲「ラ・マニック La Manic」では、ピアノ伴奏が軽くスタートしていたものの、ブリュノはマイクからまだ少し離れてお水を飲んでいて、出だしが間に合うかな?と思っていたら、歩いてマイクに近づきながら歌い始めました。つまり、最初の部分は生声だったのですが、それがまた強く響き渡る!すぐにマイクを使いだしましたが、始めの部分でもう拍手が起こるほどでした。

そして、今回はアンコールの最後の曲はミシェル・フューガンMichel Fugainのヒット曲「Je n'aurai pas le temps(僕には時間がない)」に決めているようです。

風よりも早く 時より早く 走ったとしても
あるいは空を飛んだとしても
僕には時間がない
こんなに大きな世界の広大な全てを訪ねるなんて
僕には時間がない  全てをやる時間なんて


ミシェルはこの歌を25歳で書いたそうですが、ブリュノは最近これを聞いて、50代の今の自分に強く訴えかけるものがあると、この歌を選んだとのこと。ブリュノの静かで暖かな歌声で歌われると、シンプルな歌詞が心に響き、コンサートの締めくくりにとてもふさわしい曲でした。

今回のツアーもコンサート後にサイン会があり、その時に、なぜこのラスト曲をアルバムに入れなかったのかブリュノに尋ねてみたところ・・・なぜだか自分でもわからない、との答え(しばし自分でも不思議そうに考え込んでいました)。後で思いつきましたが、アンコール曲だから隠す感じにしたかったのかもしれません。でも、コンサートでないとこの素敵な曲を聞けないのは、来られない人がかわいそうな気もします(それを言ったら、ほかの曲も同じですが・・・)。


Bruno Pelletier et le Grand Choeur Jukebox 
ブリュノ・ペルティエと「ジュークボックス」コーラス隊


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私が2018年の9月に参加した3夜めのコンサートは、「ジュークボックス」という名の200人のコーラス隊とのソロ・コンサート。曲目はブリュノのキャリアをたどるもので、昔から最近までのヒット曲を様々に歌い上げました。1年前のフランスでの千人のコーラス隊とのコンサートでもそうですが、フランスやケベックではこういうプロ歌手とコーラス隊とのコラボレーション・コンサートが盛んに行われます。

ブリュノは今までいろんなコーラスとのコンサートに参加したことはあるけれど、ソロ・コンサートとしては初めてと言っていました。これは、コーラス隊のほうからオファーがあり、ブリュノへのオマージュ曲を並べたコンサートにしたい、とあちらから希望があったそうです。

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Photo by Line Côté

会場は、モントリオールで最古の劇場(1893年設立)、Monument National。とてもシックで素敵な劇場です。VIPチケットも発売され、チケットは完売(ちなみにそれまでの「親密な夜」も2夜ともに完売)。後で聞いたのですが、セリーヌ・ディオンのお母さまもブリュノの歌声を聞きに観客としていらっしゃっていたそうです。

バック・ミュージックは、前述のジュリー・ラモンターニュのピアノを始め、ブリュノのいつものバンド・ミュージシャンが集結。

この日もスタンディング・オベーションが何度も沸き起こりました。
ミュージカル「スターマニア」から「ビジネスマン・ブルース」を歌った時のこと。ブリュノは途中まで自分でギターを弾いていたのですが、サビの前にスタッフが舞台中央まで来て、ブリュノはそのギターを渡しました。そこで軽く笑った後、さっとマイクを持って歩きだし、サビの部分を強く歌いだすブリュノ。それがものすごく素晴らしく、歌の途中でしたがスタオベが自然に沸き起こました。会場全体が感動に包まれていると気づかされます。

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Photo by Line Côté

トークはいつもの通りウィットに富んでいて、客席から心地よさげな笑いが何度も起こります。そんな打ち解けた雰囲気から、さっと鮮やかに感動的に歌いあげる力量は本当に素晴らしいものでした。そして、感動的な歌い上げ曲ばかりではなく、ポップス系、ロック系の自身のヒット曲を軽やかに鮮やかに歌い、かっこいい!

そして、このコンサートではコーラス隊が入っていたため、いつもは客席に一部分を歌わせる「カテドラルの時代」をフル・コーラス自分で歌ってくれました。やはりフル・コーラスのブリュノのカテドラルは感動もの。この日も「リューン(月)」も歌ってくれたのですが、日本やヨーロッパでは9月16日の「ノートルダム・ド・パリ」が20周年記念日を迎えていた時間帯。この大きな記念日に世界最高峰のカテドラルやリューンを聞くことができました。

「ノートルダム・ド・パリ」20周年

フランスのミュージカルの歴史の扉を開いた大ヒット作「ノートルダム・ド・パリ」の初演で、ブリュノはグランゴワール役を務めました。時折ブリュノがコンサートで話すのを聞いていると、オリジナルキャストというのは単に与えられた歌を歌うのではなく、役そのものを制作陣と共に産み出す側なのだと感じます。

今回のコンサートでも語っていましたが、ブリュノがオーディションを受けた時、最初はカジモド役でトライしたけれど声が合わずにダメ。すると、作詞家リュック・プラモンドンや作曲家リシャール・コッシアンテが、「まだはっきりどうなるかわからないけれど、ナレーター役でこういう曲があるんだ」と言ってブリュノに歌わせた曲が「リューン」であり、「カテドラル」でした。プラモンドンは名曲リューンを舞台からカットすることも考えていたのですが、ブリュノが入れるべきと強調したそうです。考えてみれば、原作のグランゴワールはちょっと残念感漂うキャラクターで、確かに「リューン」を歌い上げるようなタイプではありません(どちらかといえば、グランゴワールが書いた詩、という感じ)。まだあまり出来上がっていなかった詩人グランゴワールの役は、ブリュノの歌声が存在したからこそ、原作とは少々違う、輝きを持ったかっこいい役柄になったと言えるかもしれません。

今年2018年9月16日は、「ノートルダム・ド・パリ」の20周年記念日でした。ちょうどブリュノの地元モントリオール公演の時期にあたり、その直前のプレミア公演にブリュノも招かれました。大勢の有名人が集う中、新聞記事でブリュノの名前はピックアップされて報じられ、ノートルダム公演サイドも特別にブリュノのルポ・ビデオを作ってくれていました。




また、20周年記念日当日にはモントリオールのテレビ局TVAにエスメラルダ役のイバ・タワジとフェビュス役のマルタン・ジルーが生出演していましたが、その二人に向けてブリュノがビデオ・メッセージを寄せているのも放映されました。この番組で司会者が番組を締めくくろうとしていた時に、タワジちゃんがそれを軽く遮って、ブリュノは素晴らしい人で・・・とわざわざコメントしていたのが印象的でした。

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ブリュノが歌った「カテドラルの時代」はシングルカットされてミリオンセラーの大ヒットとなり、様々な音楽賞を受賞しました。その曲が今も歌い継がれ、公演は世界20か国以上で上演され、その波はずっと続いています。そして、ブリュノはこの「カテドラル」は自分のコンサートでは、必ず歌います。多くの場合、途中の繰り返し部分は客席に歌わせますが、それは客席の全員が歌えるから、なのですね。欧米では観劇にはカップルで来る場合も多く、必ずしも客席はファンばかりではありませんが、それでも大合唱になります。そして、クライマックスは自分で高らかに感動的に歌い上げ、拍手喝采でフィニッシュ。

これからも、ブリュノの「カテドラル」は続いていきます。そして、その珠玉の歌声で、たくさんの感動が生み出されていくことと思います。


[2018年9月18日] Merci beaucoup pour les photos, Line !

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アーティスト・プロフィール
Bruno Pelletier

Bruno Pelletier ブリュノ・ペルティエ

カナダのフランス語圏ケベック州出身。3度の最優秀男性歌手賞の実績を誇る実力派歌手。ミュージカル「ノートルダム・ド・パリ」で人気を不動のものに。ロックからジャズまで幅広い音楽を豊かに歌いこなし、定期的に東欧でもツアーを行っている。

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