Bruno Pelletier Japon : 2009 ミクロフォニオム

(1) プロローグ

ケベックの白鳥 - 水平線の向こう側 -
  (2009 ミクロフォニオム)

(1) プロローグ Le prologue

水平線は遥か遠くそこにある。
天と地を分けるその線はくっきりと目に見えるのに、しかし同時に、地図上には絶対存在しない。

四方を海に囲まれた日本では、水平線は異国への扉だ。外国のことを「海外」というこの国で、地続きの場所に隣の国があるというのはありえない。

水平線の向こうには見知らぬ国がある。
そんなことは当然昔から知っていた。しかし、それはあくまでただの知識であって、テレビや本の中の絵空事とさして変わりはなかったかもしれない。

そう、頭では知っていた。でも本当のところは知らなかった。


欧米の文化に実際に初めて興味を持ったのは、星だったと思う。

子供の頃そろばんを習っていた私は、帰りが夜になることが普通だった。当時は空はより広く澄んでいて、星はより鮮やかに輝き、小さなものまでよく見えた。こうして私は輝く星を眺めるのが好きになった。

興味の赴くままに本を開き、星座というものがあることを知り、各々の星座にはギリシャ神話に彩られた物語があることを学んだ。空という最大のキャンバスに太古の昔から人は絵を描いてきたのだ。明かりの存在しない夜の闇の中、星は羅針盤であり、美しい調べだったのは想像に難くない。

夏はサソリ、冬はオリオン、季節の代表的な星座はやはり非常に目立つ存在だった。
星座の物語では、自分を殺したサソリが空にいる間勇者オリオンは地の下に隠れていて、サソリが西の空に隠れると恐る恐る東から顔を出す・・・と説く。季節の偶然の一致なのか、それとも緻密に計算された配置なのか、単なる天空の絵画以上の何かをそこに感じた。


そんなある日、夏休みの宿題で星の観察をすることにした。一晩中起きて、星座の移動をノートに記録していく。徹夜するのが初めてなら、星が確実に動いていくのを実感するのも初めてで、夜通し興奮していたように思う。

そして明け方、気がつくと東の空にオリオンが静かに昇ってきていた。サソリは西の彼方。ああ、本当だ!神話が語る世界は本当だったんだ。そして地球はほんとうに回転しているんだ・・・。それは、知識と体験が初めて融合した瞬間だった。知っていることと、体験することは全く違う。たとえそれがちっぽけな経験であっても。


・・・フィレンツェではこう言われている  
・・・地球は丸いらしい
・・・そしてこの世には大陸がもう一つあるらしい・・・


「ノートルダム・ド・パリ」の中での予言通り、確かに地球は丸い、それを体験した。しかし、もう一つの大陸をこの時私はまだ知らなかったし、そこに暮らす人も知らなかった。ましてや、この大陸でフランス語で話したい相手ができようとは、想像もしていなかった。




ケベックの白鳥 - 水平線の向こう側 - (2009 ミクロフォニオム)

(1) プロローグ Le prologue
(2) 遠く家を離れて Loin de chez moi
(3) 最高のコンチェルト Le plus beau concerto
(4) たいしたものはないけれど J'ai pas grand chose
(5) 遭難した地球人のSOS S.O.S. d'un terrien en détresse
(6) 別のほとり D'autres rives
(7) 君がどこにいても Où que tu sois
(8) ここと同じさ Ailleurs c'est comme ici


- 2009 ミクロフォニオム (1) -

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アーティスト・プロフィール
Bruno Pelletier

Bruno Pelletier ブリュノ・ペルティエ

カナダのフランス語圏ケベック州出身。3度の最優秀男性歌手賞の実績を誇る実力派歌手。ミュージカル「ノートルダム・ド・パリ」で人気を不動のものに。ロックからジャズまで幅広い音楽を豊かに歌いこなし、定期的に東欧でもツアーを行っている。

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